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■■ガイダンスカリキュラム(GC)の広場
−「授業型の生徒指導」の最新情報−

 
4.シンポジウム(2008年)
「ガイダンスカリキュラムの広がりと展望」
 
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●全体像
 

第6回日本教育カウンセリング学会 自主シンポジウム3
ガイダンスカリキュラム(授業型の生徒指導)の広がりと展望
〜生徒指導の未来と教育カウンセリング〜




2008年11月29日(土)10:00-12:00 聖徳大学

企画・司会
 八並光俊先生(東京理科大学教授・文部科学省視学委員)
シンポジスト
 清水井一先生(上尾市立西中学校校長)
 佐藤眞弘先生(千葉県教育庁教育振興部指導課指導主事)
 岡田 弘先生(東京聖栄大学准教授)
フロア参加者 約70名
ねらい
 @全国に広がるガイダンスカリキュラムの実践を集める
 A実践上のノウハウを共有する
 Bガイダンスカリキュラム推進の方策を案出する

 
   
●話題提供
 
ガイダンスカリキュラムの意義と特色
八並光俊先生
 アメリカではガイダンスカリキュラムがスクールカウンセリングの中心。生徒指導の面からも全児童生徒に対する予防開発的指導としてのGCが必要。
 GCの7つの特色。@構造化されたインストラクショナルプログラム,Aプロアクティブつまり予防や開発に焦点をおいて,B明確な教育目標がある。C系統的計画的な内容がある。D集団の中で個を生かしていく発想がある。E評価ができて再現性がある。Fどんな力を子どもたちにつけていくかというコンピテンシーベースド。特に実態の調査,結果の測定などアセスメントが欠かせない
 集団ベースで個を育成するGCの企画・運営・実践・評価が教育カウンセラーの専門性だ
 学校が教育困難状況からの立ち直る生徒指導にGCが欠かせない。GCは集団ベースで,違いや個性に気づき,キャリア教育と関連させて将来展望をもたせる。


中学校にとってのGCの意義と効果を上げる秘訣
−清水井一先生

 生徒指導上の困難を乗りこえるために背水の覚悟でGCを学校に取り入れた。総合の時間で教育課程に位置づけ,体験学習と関連づけ,20時間程度のGC授業を行う。教育課程には学校の課題を解決するプログラムを示して位置づける。
 成功の秘訣は集団の指導できる教師にGCの授業をさせること。また生徒たちに「先生は先生と呼ぶ」「先生の話は聞く」「先生の指示には従う」を約束させ,「この授業を受けたらいいことが起こる」ことを体験できるようにした。
 GCの授業を生徒理解として機能させ,子どもの変化を見とって個別対応につなげる
 1年で学力まで上がった。校長が替わっても続いている

千葉県教委〜発達を踏まえたねらいと1時間の展開〜
−佐藤眞弘先生−

 小1から中3まで年間4時間の人間的な力をつけるプログラムを19年から全県で実施。
 プログラムは,最初はコミュニケーションの力,3,4年生は共感,お互いを理解し合う。5年生は問題解決,6年生は自己主張,中学1年はクリティカルシンキング(自分を省みたり批判をする),2年生はセルフコントロール,3年生は意志決定。
 1時間の流れは,(1)授業の流れを確認する。(2)本時のテーマを確認する。(3)モデルを提示する。(4)子どもたちの実習活動。(5)まとめでは,プリント等を用いて,学んだことを概念的に整理していく。(6)次回の予告。
 1年目で,小学校は全学校の92%,中学校は84%が実践した。「楽しそうに取り組んだ」「周りの人のことを気にかけるようになった」「人の話を聞くようになった」「あいさつが多くなった」「トラブルが少なくなった」など成果が報告された。

さいたま市,静岡県,石川県,横浜市,川崎市への広がり
−岡田弘先生−

 静岡県は年間4時間を基本。石川県は来年度から小学校から高等学校まで全クラスで実施する。時間数の規定はない。横浜市は小学校から高校まで総合を核として時間数の規定なく実施している。川崎市は来年に向けテキスト作り中。特活を使って6時間が目安。
 さいたま市は,教育特区が認められ,小学校3年生から中学校1年生まで年間18時間つまり1学期6時間を人間関係プログラムを実施。各学期の2週間以内に6時間を行う。
 さいたま市の授業者研修は,初任者でも全教師が実践できるように,エンカウンターによるあたたかな人間関係作りとソーシャルスキルトレーニングを中心に教える。
 さいたま市はアセスメントを応用教育研究所の協力を得て開発した。2軸と6つの因子項目を元にしたものを全小中学校に実施する。
 スキルが身につくと自尊感情が高まることがわかった。またスキルを教えることを通して人格の完成につなげることを頭に置いて実践することが大切だ。

 
   
●討議
 
〔質疑〕
Q1:学校を建て直す授業ができる教師は何人いたか?
A1:学校に1人から始め,学年2人体制にした。教師の授業力は欠かせない。清水先生

Q2:教え込むのではなく,気づきを引き出す授業展開が大切だ!?
A2:気づきの場面を用意している。教師の力量にも期待する。 佐藤先生 
A2:GCは達成すべき目標がある。教えることも必要。集団を通した個の育成。八並先生

Q3:教師に必要な力は?
A3:子どもと向き合い,いい面を引き出す力。現状を認識し改善する力。佐藤先生
A3:してはいけないことをやめさせられる教師。指示が通るクラス。清水先生

Q4:教師に必要な力をつける研修会は?
A4:千葉県では各校1名を集め,1日または半日の研修会。 佐藤先生
A4:さいたま市,静岡県は各校から中核となる教師を1人招集。カウンセリングスキルを使えるように。教育カウンセラー研修を勧める。 岡田先生
A4:研修は年間計画を立てて,エンカウンターなど十数回。生徒指導技術も。清水先生

Q5:統一した尺度作りは?
A5:地域の実情に即した尺度を作っている。 岡田弘先生
A5:川崎市は人権など,地域の教育目標に合わせる。標準化を行う 応用教育研究所・村主典英

フロア参加者による実践紹介〕
●文科省の研究開発校の指定を受けてプログラムの開発をして6年目になる。年間30時間ほど人間関係作りに取
り組む。昨年度から小学校,幼稚園と11年間に渡るプログラムを作っている。不登校の数が6%から2%に減少した。ストレス反応が減り,学校に対する楽しさや満足度が高まっている。深美隆司先生(松原市立松原第七中学校)
●総合の時間でキャリア教育プログラムとして各学年35時間今年から実施中(仲村将義先生・沖縄県立南風原高校)
●平成12年度から学校規模のソーシャルスキル教育を立ち上げた。6年間リードしたのち転勤。現在9年目が続いている。人が変わっても取り組みが継続するプログラムの要素を研究している(伊佐貢一先生・上越教育大学学校教育実践研究センター)
●福島県大熊町(1中学校,2小学校)で19年から人間関係作りに関する取り組みを,武内敏英教育長の発案でスタートした。20年からは教育課程に位置づけて取り組んでいる。教育センター教育相談チームでは内容・研修に関する助言を行っている。(猪俣雄介先生・福島県教育センター教育相談チーム)

 
   
●まとめ
 
GCの課題と教師に必要な能力
−國分康孝先生−

 臨床心理士と教育カウンセリングの最大の違いがGC。GCが教育カウンセリングの得意技になっていく。GCを「授業型の生徒指導」とはうまく日本語になっている。
 課題は3つ。(1)人間関係に偏らないテーマ設定を。キャリア教育,スタディスキル,保健学習のプログラムが考えられる。(2)スキルに偏らないで,@スキル,A感情教育,Bコグニティブ−生きる意味とは何かとか思考,価値観に関するものを扱うように。(3)GCの日本語訳が「授業型の生徒指導」だ。しかし授業との違いを強調する必要がある。授業は知識体系を教えるが,GCは子どもが抱えている問題を解くのをヘルプする。
 GCを行う教師に必要な能力3つ。(1)自己開示能力。プログラムを展開するとき必ずデモンストレーションをする。(2)アサーティブ能力。「5人1組になりなさい。1人1分ずつ」と自己主張していかないと展開できない。(3)組織を使う能力。学校でいろいろな人と連携してやるために。

自己開示能力には自己理解し自己受容できていること
−國分久子先生−

 自己開示能力を持つためには,教師がエンカウンターを受け,自分自身を知り自分を受け入れている必要がある。

成果
 約70名の参加者を迎え,ガイダンスカリキュラムという概念を扱う日本で初めて公的な研究会を行い,全国の実践の最前線を確認した。本会をいずれかの形で継続させ,引き続きGCの理念の元に実践を推進する核を作っていくことを確認した。

次回企画の候補
 (1)一般GCの理論化
 (2)現場実践者の工夫と苦労
 (3)今回シンポで出された課題への回答


2009年11月の日本教育カウンセリング学会でもシンポジウムを企画します!進行助手・まとめ:図書文化・東
 
 
 
   
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