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■■ガイダンスカリキュラム(GC)の広場
−「授業型の生徒指導」の最新情報−

 
4.シンポジウム(2009)
「ガイダンスカリキュラムの授業と工夫」
 
全体像     話題提供    模擬授業   討議     感想   まとめ
 
 
   
●全体像
2010/1/8up
第7回日本教育カウンセリング学会 自主シンポジウム4
ガイダンスカリキュラム(授業型の生徒指導)の授業と工夫
〜模擬授業で体験する「育てる生徒指導・教育相談」の最前線〜



                八並光俊先生による話題提供
 

2009年11月28日(土)10:00〜12:00 鎌倉女子大学
企画・司会
 八並光俊先生(東京理科大学教授・文部科学省視学委員)
シンポジスト
 清水井一先生(東京理科大学教授非常勤講師
            ・前上尾市立西中学校校長)
 深美隆司先生(松原市立第七中学校教諭)
 曽和幸子先生(松原市立第七中学校教諭)
フロア参加者 約40名
ねらい
 @実際の授業を見学・体験することで,授業のイメージを共有し,
   授業構成上の知見を共有する
 Aカリキュラム制定のための基本的手順を開発する
 
   
●話題提供
 
なぜいまガイダンスカリキュラムか
―八並光俊先生―

 生徒指導はまだ問題対応型,後追い型が大半で,これをプロアクティブなガイダンスカリキュラム(GC),予防開発的な生徒指導にする必要がある。
 90年代以降のアメリカのスクールカウンセリングは,子どもたちの個性・長所を伸ばし予防的な教育に力を入れ,幼稚園・保育所から高校段階まで,社会に出て役立つライフスキルの育成を基本としている。教育カウンセリング(育てるカウンセリング)は同じことを進めている。教育カウンセラーは,これからはカリキュラムマネージャーになるのと同時に,アセスメントを行う役割が期待される。
 GCは,@構造化された開発的・予防的なインストラクションプログラム,A明確な教育目標をもった系統的・計画的なカリキュラム,B発達段階に応じた段階的・継続的な知識やスキルの習得をめざす,Cその教育効果は査定可能,である。
 生徒指導がうまくいけば学力も保持される。キャリア教育,特別支援教育,教科指導なども連動する。連動性も考慮して,GCを進めてほしい。
 当日配付資料pdf


学校でのガイダンスカリキュラム導入の留意点
―清水井一先生―

 生徒は「教えられていないからできない」ので,1つ1つ立ち居振る舞いを教えていけば,できるようになる。これがスキル教育(=GC)導入の基本的な考え方。
 1年間のプログラムを作るときに心がけたことは,@既存の方法でいい方法があれば,それを使う。学校でやっていることを否定しない。Aエンカウンターなどの「技法」を前面に出さない。聞かれれば「これの元はエンカウンター」というのはある。
 授業の中に位置づけることに対して,職員・生徒・保護者から「効果があるんですか」という言葉があった。「3か月やって,効果が出るはずです。変わらなければ責任はとります」と言って進めた。スキル教育をとりいれて学校生活が落ち着いたなら,学力にもよい影響があるのは確信していた。
 本や指導案があるだけでは実行はできない。やる人がそれなりの覚悟をすること。カリキュラムを通して授業をきちっと行い,生徒に立ち居振る舞いを教えていく。
 
   
●模擬授業  
『ストレス』って何? ―深美隆司先生・曽和幸子先生―


                  深美隆司先生による授業
  
 フロア全体のリレーションづくりをした後、生徒役と観察者役に分かれて模擬授業を行った。
 ストレスとは人間の「評価」システムから生まれ,対処できるものであることに気づくことをねらいに,生徒役が,「パニックゲーム」を通して,普段なら苦もなくできることが,焦りがあるとうまくできないことを体験する。
 学校ではこのような授業の後に,振り返り用紙に「授業内容がよくわかった」「興味がある」「自分の生活に関係がある」の3点について「とてもある」「ある」「ふつう」「あまりない」「まったくない」で答えてもらい,そのほかに「自分が思ったこと」を書いてもらう。そこから子どもの状態を読み取り、状態が悪ければ対処する。
 授業プランの巧みさはもちろん,授業者の深美先生・曽和先生の,生徒を引きつけ,生徒一人一人の様子を受け止めた応対など,授業の雰囲気そのものを体験できた。

松原市立松原第七中学校「人間関係学科(HRS)」の実践
―深美隆司先生―

 「@学校生活が楽しくなれば→A悩みやストレス反応が減る。悩みやストレス反応が減れば→Bトラブルや不登校が減る」という考え方でやっている。
 授業だけでなく,家も学校も面白くない子どもをあぶり出している。普通なら崩れてしまいそうな子どもが崩れないという効果はある。
 授業に取り組むことで,教員の「相談力」がついてくる。7年やるうちに,子どもが悩みを「先生に相談する」という現象が出てきた。ここが鍵かなという気がする。
―曽和幸子先生―
 問題行動が減少してきた。
 変化の例として,ある外国人生徒に対して,日本語の指導の意味もあって「さいころトーキング」をクラスで行った。どういう生活をしているか,何人家族か,だんだん話すようになる。それを繰り返していくことで,お互い仲間意識ができてくる。「自分のことわかってくれる」と思える相手ができるというのは大きいようだ。
 また,ストレスの勉強をすることで,カッとなるのをコントロールできるようになってきた。
 当日配付資料pdf
 松原第七中学校のHP


              実際の学校での掲示物も展示された
  
 
   
●討議
 

Q1:小学校と中学校,あるいは小学校同士の連携のポイントは?
 A1:小・中の連携では,「こんな子どもだからこんなチームを作ろう」とまず先生同士が仲よくなるのがコツ。小学校6年と中学1年のコラボ授業などの機会を作る。合同会議をしてキャッチボールしながら1つの授業を積み上げていく。〔フロア参加の松原第七中学校校区の小学校の先生。校区の幼・小・中学でGCの授業に取り組んでいる〕
Q2:担任はクラスの子どもたちにどのように働きかけるのか?
 A2:クラスというよりも学年なり学校で働きかける。人間関係学科は35時間あるが,いろいろな学習とリンクしている。クラス担任の思いの前提には学年づくり,学校づくりがある。〔深美先生〕
 A2:中学校では学級でやっても生徒指導上の問題解決はむずかしいところがあり,やはり学年単位。〔清水先生〕
Q3:スクールカウンセラーはGCにどのように参加するか?
 A3:例えば不登校生たちの支援は,学校の指導部,校長・教頭,学年代表,養護教諭等も参加して会議を行い,SCも入る。また引きこもってしまったケースでは,SCが訪問カウンセリング。ただしSCは単独で何かをすることはなく学校の方針の中で動く。〔深美先生〕
Q4:幼・小・中と一貫した予防型の生徒指導の重要性は感じているが,先生同士がどうしたら1つにまとまるのか?
 A4:教員同士がアサーティブになること。アサーティブの研修をしただけではなく,実際に使っていくことが大切。〔深美先生〕
 A4:一方的に教え込むというのではなく,あり方を一緒に学んでいこうという授業。教師が楽しそうにやっているのを子どもが見て,「楽しそう」と思うようになる。〔曽和先生〕
Q5:教師のマネジメントについてアドバイスを?
 A5:個別に話し合うこと。小・中連携では,校長同士が定期的に話し合い,生徒指導主任は情報を提供し,お互いの授業をよく見ること。連携は校長のビジョンが大事。小・中の校長がマネジメントしなければいけない。〔清水先生〕



        曽和幸子先生                 清水井一先生

 
   
●感想  
授業の様子や求められる教師の資質が伝わってきた
 楽しい模擬授業に参加させていただき,また実践の様子をうかがって,子どもたちもきっと楽しく,クラスも心が1つになっていけるのだろうと,うらやましいことでした。〔匿名〕
 実際に模擬授業を目の当たりにして,より納得できました。授業者の先生方のお人柄にも惹かれました。このように開かれたお人柄である方が核になり,育てていらっしゃる,そして育っていらっしゃることが,実践の歯車がうまく回っている原動力であり結果と感じました。〔中学校教諭〕
連携の重要さ
 幼・小・中と連携した実践をすることの大切さと効果を理解することができました。全国に広がっていくことを期待しております。〔スクールカウンセラー〕
教師の集団づくりが課題
 多くの中学校区にこのような取り組みを広めたいと考えています。教師集団が一つになるために,誰がどのように働きかけたらいいか,私の大きな課題です。〔教育系大学教授〕
 中学校現場においては,教師の意識改革がまず重要であることを強く感じる。そのために教員間の同僚性・協働性をいかに高めるか,お互い語り合うこと(自己理解・他者理解)の重要性などを感じながら聞いた。養護教諭がそのリーダーシップをとる1人になっていけたら……と思う。〔中学校養護教諭〕
GCの必要性を実感している
 最近スキルトレーニングが必要な子どもたちが増えてきているのを感じている。大人社会のルールでやっていけない犯罪につながるようなこと(例えば万引きや恐喝etc)はどんどん低年齢化し,トイレットトレーニングをはじめ人としてできて当たり前の部分についてが高年齢化してきている事実がある。いかに人としての見方・考え方を育てていったらいいのか。日々の実践に模擬授業のいろいろな小技を取り入れ,共通の土台に乗れる感じであったり,お互いを意識して取り組む感じであったりを,少しでも子どもたちに経験させたいと思えました。〔小学校教諭〕
GCにおける日本型SCの役割とは
 予防・開発的なプロアクティブなカウンセリングの実施にもっとエネルギーを注げる現場にするために,日本型のSCがGCで担える役割を考えていきたい。〔小学校スクールカウンセラー〕
実践情報
 勤務校で,「情報モラル」育成をめざして,アサーションを取り入れた授業を行っています。〔高校教諭〕
 
   
●まとめ
 
できたこと
○ 授業を体験したことで,GCの授業はどのようなものか,指導案からはわからない授業者に欠かせない姿勢を知った。
○ GCが学校のシステム(教科・生徒指導・教育相談)の一部として位置づけられて機能することがわかった。そうすることで,学校の教育環境のベースを作り,児童生徒の適応や人格形成の意図的な推進に役立つだろう。
課題
○ 学校内外のチームワーク形成やマネジメントが重要であり,その方法は断片的に語られているだけ。
○ GCが効果を上げる前提となる,学校や子ども,地域のアセスメントの方法と対応策の考え方の実践や議論が不十分。
○ 学校教育課程上の位置づけが高いハードル。学習指導要領や学校経営方針とのかねあいや取り入れ方のノウハウが必要。
               以上まとめは,本HP管理者の私見でまとめた。

 
   
2008年シンポジウムの記録はこちら                 
 
   
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