Menu
ホーム
 
エンカウンターとは?
 なぜ注目されるか
 体験談
 紹介記事
エクササイズ
 
ネットワーク
 北海道・東北
 関東
 甲信越・北陸
 東海
 近畿
 中国
 四国
 九州・沖縄
 学習機関・研究会
 参加募集
研修会
 研修会情報
 継続的な学習会
 参加者の声
 SGE進路参加者の声
文献案内
 一般書籍等
 紀要・冊子
情報提供
 体験談募集
 アンケート
育てるカウンセリング
 
 
國分カウンセリング研究会.
 
リンク集
 
図書文化ホームページ.
育てるカウンセリング Home
実践紹介
   
6.第5回面接「徐々に」  
  
ブリーフセラピーを生かした不登校生徒への対応〜
育てるカウンセリングのトップ へ戻る
  一つ前に戻る
一つ先に進む
 いつものようにA君は12時頃にやってきて,一緒に給食を食べました。


***************


 食べるとき,私はミラーリングをしながら,しばらく適応指導教室での勉強の話をしました。

「勉強って言えば,小学生のころの勉強って,いま考えるとどう?」
「けっこう簡単だなぁて思わない?」

「思います」

「でも,やってるときは必死だったんだよね」

「はい,けっこう難しかったです」

「でも,いまは簡単でしょ?」

「はい」

「1つ上の段階にいくと,その前のことって,意外と楽に感じるから不思議だよね」

「そういえば,卒業式だけど……」
「この前,お母さんが『卒業式は遠慮します』って言ったとき,A君は『まだ決めたわけじゃない』って言ってたよね」

「はい」

「卒業式に出ることを目標にしたらどうかな?」

「…………」

 A君の反応が薄いので,話題を変えました。

「ところで,いつごろから『学校へ行きたくないなぁ』とか『人と話すのがいやだなぁ』という考えが頭の中に入ってきたの?」

「1年生の終わりごろからです」

「ふーん,そうなんだ。」

 私が「頭の中に入ってきた」という尋ね方をしたのは,A君がそう思ったのではなく,外部からその考えが入ってきたという,「外在化」をするための発言です。

「でもね。どうすれば解決するか,本当はA君は知っているんだけど,その知っているということを,知らないだけなんだよ」
「わかる?」
「君は,どうすれば解決するか,知っているということを知らないだけなんだよ」

「…………」

 これは「混乱技法」の一種です。A君は,しばらく言葉をかみしめるようにしていました。
 ここまでのやりとりは,問題をもっと具体的にして,二人で解決を作り出すための準備のつもりで行いました。


***************


「教室をのぞきに行ってみようか?」
「だれかが挨拶してくれたら,何か合図を返してあげた方がいいよ」

「校長先生。適応指導教室の先生が,『緊張したら,緊張しましたと言っていい』と言ってました」

「えっ,A君は緊張してるの?」

「いまはしてないです」

「そうか。もちろん,緊張していたら緊張してるって言っていいんだよ」
「でもね。緊張することは,実はいいことなんだけど,知ってた?」

「???」

「だって,オリンピックのときだって,選手は緊張してると思うけど,あれは緊張するから力を引き出せるんじゃないかな」
「緊張ってね,人間の力を引き出してもくれるものなんだよ。だらけていると力は出ないじゃない。適度な緊張は,いいんだよ」
「でも,緊張しすぎたら,先生に言ってね」

「はい」

 このへんの内容は,緊張をリフレーミングするための,口からでまかせですので,あしからず。

「じゃあ,行こうか。この前より少しゆっくり歩けるかな?」

「はい,できます」

 A君と私は校長室を出て,少しずつ教室に近づいていきました。


***************


 教室に向かうとき,私は「分離」という技法を使いました。

 分離とは,物事を分けて考えることです。

 人間は時間を年・月・週・時・分のように分けて考えます。このように,「分ける」ということは,人間にとって自然なことです。そこで,これを利用して,一つの行為や行動を分けて捉えさせる方法があります。例えば食べるという行為も,最初の一口,二口目などと分けられます。

 私は,教室へ行くという行為についても,最初の曲がり角まで,次の曲がり角まで……というように,分離してA君に考えさせました。

 はじめの曲がり角まで来たときに,「緊張した?」とA君にたずねました。すると「大丈夫です」と答えが返ってきました。

 また数メートル歩いて,「緊張した?」とたずねると,「平気です」という答えが返ってきました。

 とうとう教室の前に来たとき,以前ならA君は早足で通り過ぎていましたが,この日はよりゆっくりと歩いていました。そして,教室の中の様子も見ようとしていました。

 また,途中では何人かの先生に出会いましたが,自分から挨拶をしました。

 教室の前を通り過ぎたあと,緊張したかどうかを確認しました。緊張は無かったとの返事が返ってきました。

 試しに「もう一度,通ってみる?」と聞くと,意外にもA君は「はい,行きます」とすんなり了承し,再度教室の前を通って校長室に戻りました。


***************


 校長室に戻ってから,再びA君にたずねました。

「どうだった? 緊張しなかった? 無理しなくていいからね」

「はい,大丈夫です」

 次回の約束をして,面接を終了しました。

 
   
   
    一つ前に戻る    一つ先に進む  
   
    育てるカウンセリングのトップ へ戻る  
   
  Top  
 
(C) Copyright 2001, Toshobunka