「自分でコントロールして食べてね」
「はい」
いつものように給食を一緒に食べ,この日は一気に勝負に出ました。
A君が給食を食べ終わったころ,昼休みを利用して,アルバム委員の生徒にA君の原稿を取りに来てもらいました。担任の先生に頼んで,来る人数は3人に増やしてもらいました。
生徒たちが戻ったあと,A君に尋ねました。
「どう? 緊張した?」
「緊張しませんでした」
「2人と3人の違いは?」
「特にないです」
「1人増えただけだもんね。今度,ランチルームで給食食べてみない?」
「お別れ給食というのもあるよ。考えておいてね」
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それから雑談を続けました。
「A君は,自転車によく乗るみたいだけど,やっぱり最初は補助車輪をつけていた?」
「つけてました」
「先生もつけてたよ」
「最初は,つけてないとすぐ倒れてしまうんだけど,慣れてくると邪魔になるよね」
「はい,走りにくくなります」
「先生なんか,まず片一方をはずして,慣れてきたら全部はずして,というふうにやったよ」
「僕もそうです」
「乗れるようになると,邪魔だよね」
「はい」
これは,自立の促進のメッセージです。
そして,第1回の面接で使った「前提」の技法を用いました。
「そうそう,A君の問題が解決するのに,2週間かかるか,3週間かかるか,どちらが君にとって現実的かな?」
A君は少し考えて答えました。
「2週間です」
「そうか,2週間かぁ。楽しみだね」
「じぁ,お別れ給食のこと考えておいてね。」
「はい」
この日は,私にあまり時間がなかったので,保健の先生にバトンタッチして面接を終了しました。
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このころになると,以前のおどおどした感じや,声の小ささなどは,A君からすっかり消えていました。
A君が帰ったあと,私がカレンダーを見て確認すると,2週間後はちょうど卒業式の練習が始まるころでした。
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