いつものように給食を食べ,一緒に食器を返しに行きました。
このときは,わざと,ほかの生徒に出会う時間帯にしました。
途中で,何人かの生徒に出会いましたが,A君は自分から小さな声で「こんにちは」と挨拶をしました。
校長室に戻ると,4人のアルバム委員が来ていて,卒業アルバムの話をしました。A君はとくに緊張した様子もなく,リラックスして話をしていました。
「今日はどうだった? 緊張しなかった?」
「はい,大丈夫です」
このころから,私はすべてを「緊張」という言葉にすり替えました。
さらに,いまの面接のパターンを変化させるため,午前中から登校できるようにしむけました。一回の面接時間も,このころから短くなっていきました。
「今度A君が来る日に,生活習慣病の授業があるんだけど,どうかな? 受けてみる?」
「はい,受けます」
「午前中からだけど大丈夫?」
「大丈夫です」
「おぉー,積極的だね。すごいすごい。」
「ついでに,ランチルームで,ほかの先生と一緒に給食を食べてみる?」
「はい,食べます。」
ランチルームは,ふだん生徒が使わないときは,講師の先生方が食事をしています。その先生方と一緒に給食をとることになりました。
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ところで,A君は私との面接の時,私服で登校していました。適応指導教室が私服なのです。
「卒業式だけど,出るには制服が必要だね」
「サイズが少し小さくなったかも知れません」
「困ったね。どうしよう」
「大丈夫です。やせますから」
「やせますからって言っても,無理だよ」
「毎日走ります」
「えー,でも急にはやせないからなぁ」
「じぁ,リサイクル用の制服がないか,PTAの人に聞いてみてあげるね」
「はい」
私の出張もあり,次回の約束をして,短時間で面接を終了しました。
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