この日,A君は前回の約束どおり午前中に登校し,生活習慣病の授業を受けました。授業終了後には,ランチルームで,保健の先生,スクールカウンセラーの先生,講師の先生と一緒に給食を食べました。
給食後,A君が校長室に顔を出しました。
「今日はどうだった? 緊張は?」
「平気です」
「そうかぁ。進歩したね」
「だいぶ緊張しなくなったね」
「あとは,授業でも,卒業式でも,その中に入っていければ,君の問題も解決だよね」
「はい」
「先生は,たぶんできると思うよ」
「みんなの中に入って,君は君に必要なことをすればいいんだよ」
「ただそれだけ……」
「はい,たぶんできると思います。」
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卒業式に着るためのリサイクルの制服がPTAから届いていました。A君は袖を通してみましたが,やはり小さくて着られませんでした。
「すごい,大きくなったんだね」
「どうしようか?こまったなぁ」
「大丈夫です。一日くらいきつくても我慢できます」
「えー,大丈夫?」
「大丈夫です。息を止めてます(笑)」
「息を止めてたら死んじゃうよ〜」
A君はジョークを言いました。
「あと今度ね。3年生の性教育の授業があるよ,どう?」
「受けます」
「その日はね,3年全員のバイキング給食もあるけど……」
「大丈夫です」
「午後はね,講師の人を呼んで,その方の体験談を聞く会もあるんだけど」
「それも出ます」
「すごいね。無理はしないでね」
「はい,大丈夫です」
こうして次回の登校の約束をして,その日の面接を終えました。
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2日後,A君は約束どおり登校して,性教育の授業,3年生全員でのバイキング給食,講師を招いての講演会に出席しました。この日は,スケジュールをこなすだけで,私とは顔を合わせる程度でした。
さらに,これまではほぼ週一回のペースで登校していたA君ですが,この週は,今までになく3日間登校しました。また,学校にいる時間も次第に長くなりました。
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A君に対する私の直接的な介入は,これでほぼ終了しました。
しかし,次の登校から1週間のあいだに,A君の行動はさらに劇的に変化しました。
つづく…… 次回は最終回です
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